種子繫殖型イチゴの開発と事業展開

種から育てるイチゴへの挑戦

当社は昭和47年(1972年)にイチゴのメリクロン苗(MC苗)の販売を開始し、2005年の大規模な生産施設の改修を経て、全国有数の種苗サプライヤーとしての地位を築きました。しかし、栄養繁殖型(栄養系)を主体とした苗生産の効率化に限界を感じていたこと、また独自品種を展開する計画があり、オリジナル品種の必要性が高まっていたことから、種子繁殖型(種子系)イチゴの育種に取り組むこととなりました。

日本の美味しいイチゴを世界中に届ける

日本のイチゴは、その味・形・香りなどあらゆる面で世界中の注目を集めています。私たちは、この日本のイチゴを世界中に届け、驚きと感動を届けたいと考えています。また、生産者には、より低コスト、低労力によるイチゴ栽培を提供したいと考えています。これらの目的を達成するために種子系イチゴの可能性に注目し、種子系イチゴの育種と種子生産体制の構築を始めました。

種子系イチゴの種子

日本のイチゴの全てを小さな種子に詰め込め!

2009年から始まったイチゴ種子繁殖型品種開発コンソーシアムに参加し、種子系イチゴの育種をスタートさせました。共同開発のコンソーシアムを経て、2013年から始まった第2期のイチゴ種子繁殖型品種研究コンソーシアムにも参加し、各共同研究機関と共に種苗生産から供給体制までの構築を行いました。2015年に種子繁殖型イチゴ研究会が発足、2018年に一般社団法人となった際には、当社の役員が理事に就任しました。2017年には三重県と共同研究契約を締結し、共同育種による品種開発をスタートさせ、2019年には三重県農業研究所で種子系イチゴの育種を主導していた森利樹氏を顧問として迎え入れ、育種スピードを上げていきました。

日本国内で民間企業初となる種子系イチゴの販売へ!

ようやく新品種の開発に目途がついてきた2020年に「実生イチゴプロジェクト」が発足しました。本プロジェクトは、ミヨシグループでは初となる事業会社横断型プロジェクトであり、種子系のイチゴを取り扱うために各事業会社が持つ強みを結集させる架け橋として機能しています。2020年~2021年に3品種が品種登録出願の受理となった事を受けて、2021年に日本国内で民間企業初となる種子系イチゴ「ベリーポップシリーズ」を発表。「ベリーポップ はるひ」「ベリーポップ すず(三重県との共同開発)」「ベリーポップ さくら(海外販売専用)」の3品種を販売しています。各品種とも目標とした日本イチゴの味や色、形など優良な特徴を有しており、特に「すず」については、炭疽病と萎黄病の複合抵抗性を持つ画期的な品種です。

ベリーポップシリーズのキャッチコピーは「みらいのイチゴ」です。種子系品種は栄養系に比べ育苗の作業の省力化を図ることができ、苗づくりに使用する農薬や肥料を減らすこともできます。生産者、その先の生活者にも喜んでもらえるように願いを込めてこのキャッチコピーを作成しました。

イチゴ苗(72穴プラグ苗)

種子系イチゴは国内において省力化や生産性の観点から需要が伸びており、さらなる品種の開発や販売数の増加が期待されます。また、種子であることから輸出が容易になり、海外での販売が今後大きく伸びていくと予想されます。加えて完全閉鎖型植物工場などにおいては、種苗からの病気の持ち込みが問題となることがありますが、種子で納品できるベリーポップシリーズは、そのリスクを大幅に減らすことができ、施設内で簡単に育苗もできる事から需要が増していくと考えられます。